短期間で上達できるテクニカルライティング

コツを知れば短期間で上達します

安全注意の具体的な書き方

使用者が安全に製品を使えることが一番大切です!

1. 背景

下記の法律や規格が出されいますので、それに準ずることが必要です。
各項目の詳細は、別の記事を参照してください。

1.1 製造物責任法(PL法)

日本では1995年に「製造物責任法」(PL法)が施行されました。
製品の欠陥によって人の身体や財産に損害を与えたときは、損害賠償責任を負うという法律です。
被害者は製造者の「過失」を証明しなくても、製品に「欠陥」があったことを証明すれば、損害賠償を請求できます。

「欠陥」は3つに分類されます。

  1. 製造上の欠陥
    製造過程で粗悪な材料の混入、組立の誤りなどがあり、設計・仕様どおりに作られなかった。
  2. 設計上の欠陥
    設計段階で十分に安全性に配慮しなかった。
  3. 指示・警告上の欠陥
    製品から除去できない危険について、その危険を防止・回避するための情報を与えなかった。
    この3.の対応がマニュアルに求められています。
    具体的には、マニュアルで安全注意を喚起することや警告ラベルを製品に貼ることです。

1.2 厚生労働省が出しているガイドラインと指針

工業製品では、厚生労働省が機械メーカー向けに出している指針とガイドラインに従っています。

  • 「機械の包括的な安全基準に関する指針」
  • 「機械ユーザーへの機械危険情報の提供に関するガイドライン

対象は下記です。

  • 機械の製造、輸入を行う事業者
  • 機械の販売を行う事業者
  • 中古機械の販売を行う事業者
  • システムインテグレータ

努力義務として、提供する機械の危険性等(残留リスク一覧・残留リスクマップ)の情報の作成を求めています。それにはリスクアセスメントの実施が必要です。

1.3 国際規格(IEC82079)

マニュアルに載せるべき、構成、内容、および詳細な要求が記載されています。
一般財団法人 日本規格協会JSA)のホームページから入手できます)

1.4 その他

CE認証、EC指令、GB規格、KCs認証、ANSIなどの各地域の規格や法律にもマニュアルの記載に触れています。

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さまざまな規格!

2. 具体的な記載内容

2.1 危険レベルを明確に

安全注意事項を「危険、警告、注意」にレベル分けし、
やってはいけないこと」「必ずやること」を明確に記載するが基本です。

他の文章よりも目立つように(太字・囲み・下線など)記載します。
安全注意のレベルは、次のように分類されます。

  • !危険
    危険が回避されない場合に、その結果、重傷もしくは死に至る可能性が高い箇所の、安全メッセージおよび警告銘板に使用します。これらの安全メッセージには、危険を回避するのに講じなければならない予防措置が含まれます。
  • !警告
    危険が回避されない場合に、その結果重傷もしくは死に至る恐れのある危険な状況が、潜在する箇所の、安全メッセージおよび警告銘板に使用します。これらの安全メッセージには、危険を回避するのに講じなければならない予防措置が含まれます。
  • !注意
    それが避けられなかった場合、けがの発生または機械の重大な破損に至る可能性のある状態を示します。
  • 禁止事項
    してはいけないこと
  • 強制事項
    必ずしなければならないこと

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2.2 目次構成:消費生活用製品(民生品)

  1. 表紙
  2. 重要事項説明
  3. 商品説明
  4. 各部の名称
  5. 安全上のご注意(危険、警告、注意)
  6. 使用方法(組立方法、取付方法)
  7. お手入れの仕方
  8. 故障かなと思ったら
  9. 修理の窓口
  10. 保障規定
  11. 製品仕様
  12. 責任主体表示
    お手元にある家電製品のマニュアルをご覧ください。

2.3 目次構成:工業用製品(産業機械の例)

工業製品(特に産業機械)のマニュアルは、製品の特性上、安全に関する注意事項が多く記載されます。製品によって異なりますが、下記の構成が基本です。
・表紙
・はじめに
・機械の使用目的
・作業資格について
・機械の廃棄に関して
・仕様銘板位置について
1章 安全に関する注意事項
2章 据付
3章 操作
4章 プログラミング
5章 保守

マニュアルの冒頭部に安全情報がまとめられています。

その内容は、下記です。

  • 全般的な安全注意事項
  • 作業別の安全注意事項(設置、準備、操作、保守など作業項目別)
  • 危険区域に関する情報
  • 安全機器に関する情報
  • 警告ラベルに関する情報
  • 残留リスクマップとリスク一覧

そして、冒頭の記載と重複しても各項目に安全注意事項を記載しています。

2.4 記載が必要な項目

「1.背景」で述べた規格や法律で記載が求められている項目です。
下線の項目には注意してください。

  • メーカー名、製品ブランド名、バージョン、型番
  • 発行日
  • 耐用年数
  • 使用する前に熟読すること、保管義務
  • 製品供給者の名称、住所、連絡先
  • サービス拠点の住所、連絡先
  • 外形寸法、質量、容量、容積など
  • 性能データとその測定条件
  • エネルギー消費量(消費電力など)とその測定条件
  • 騒音、ガス、放射線、その他の排出物の量とその測定条件(必要な製品のみ)
  • 保護衣やゴーグルの装着など人身保護に必要な情報(必要な製品のみ)
  • 製品を使用するための準備に関する情報
  • 開梱の手順(梱包材の取外しなど)と梱包材の廃棄に関する情報(必要な製品のみ)
  • 設置や組立に関する情報(必要な製品のみ)
  • 輸送のための再梱包の方法(必要な製品のみ)
  • 無資格者による操作(使用)の制限
  • 想定される使用目的のための正しい使い方
  • 想定される使用目的のための安全な使い方
  • 合理的に予見可能な誤用に関する警告
  • 人身保護のための情報(必要な製品のみ)
  • 廃棄物の取扱(必要な製品のみ、掃除機のごみの取り扱いなど)
  • ユーザーによる保守及び清掃に関する説明
  • 故障診断と修理に関する情報
  • 代理店、販売会社および製造者によるサポートに関する情報
  • ユーザーの安全及び健康に関する情報
  • マニュアルの冒頭部に安全情報がまとめられている
  • やっても良いことと良くないことが明確に指示されている
  • 使用時の環境への影響に関する説明
  • 製品の廃棄方法に関する説明

3. 警告ラベルについて

マニュアルに警告ラベルの種類や位置に関しての記載をしてください。
その際は、下記の注意事項を記載します。

  • 警告ラベルは大変重要ですので、損傷したり、取り外したりしないこと。
  • 警告ラベルは、ハッキリと見えるようにいつでもきれいにしておくこと。

  • 警告ラベルが剥がれたり、紛失したり、読みにくくなったらすぐに当社に連絡すること。
    ※警告ラベルも製品の一部です。部品番号を記載してください。

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【注記】
サインや文字の大きさは、危険な箇所から適切な距離を確保した位置から識別できることが必要です。

【注記】
図記号、ISO7010、ISO7001、ISO7000などに規格されていますが、確実にその意味が伝わるデザインであれば許容されています。